2013年5月22日水曜日

asahi shohyo 書評

鏡リュウジさん(占星術研究家)と読む『ユング自伝〈1・2〉』

[掲載]2013年05月05日

かがみ・りゅうじ 68年生まれ。著書に「12星座の君へ」シリーズ、訳書に『ユングと占星術』。=西田裕樹撮影 拡大画像を見る
かがみ・りゅうじ 68年生まれ。著書に「12星座の君へ」シリーズ、訳書に『ユングと占星術』。=西田裕樹撮影

表紙画像 著者:ヤッフェ,A.、河合隼雄、藤繩昭  出版社:みすず書房 価格:¥ 2,940

■ディープな世界へサポート

『ユング自伝〈1・2〉』 [編]A・ヤッフェ (河合隼雄ほか訳、みすず書房・各2940円)

  占いやオカルトなどディープな世界に興味を持ったのは10歳の時。70年代はオカルトブームで、当時はやっていたタロットカードがほしくて、親のお金をく すねて自分で買いに行った。それが最初。以後、占星術の本をいろいろ読むようになった。そこにしょっちゅう名前が出て来たのが心理学者・ユング。最初は占 いをベタに信じていたんですけど、中学生ぐらいになると気がついちゃうんですね、「なんだ、迷信じゃん」って。でも好きな気持ちは変わらない。ユングに興 味を持った大きな理由は、占いなどのディープな世界に興味を持ったことをサポートしてくれるような知識人に思えたから。
 それで、高校生の時にこの自伝を買って読んだのです。京都で育ったのですが、京大にはユング心理学の河合隼雄先生がいらしたので、市内の書店はユング関係の本が充実していました。すぐに探せました。
  自伝といいつつ、ヤッフェという弟子が、晩年のユングの聞き書きをまとめたもので、一種の聖人伝になっています。とはいえ、当時はこれがユングを知る貴重 な資料だったんです。ユングは、近代的で合理的な側面とオカルト的なことにリアリティーを感じる2人の自分が自分の中にいる、というようなことを語ってい て、それは「あ、わかる」と思った。
 でも最初に読んだときは難しくて読み通せなかった。ただ「私の一生は、無意識の自己実現の物語である」とか「神話はより個人的なものであり、科学よりももっと的確に一生を語る」とか、本に線を引っ張った箇所には、ひかれた覚えが確かにあります。
  その後、国際基督教大学に進み、大学と同大学院でユングを中心とした宗教学を学びました。その時も買い直して読みました。ユングはオカルト的なものにどっ ぷりかかわったから世界で評価が分かれているんですが、それはオカルト的なものの近代の位置をよくあらわしていると思います。「ユングで修士号とった」と いうと英国の占星術師からは「どうやって?」と驚かれます。「批判的に論文を書いた」というと納得するけれど(笑)。
 ユングは今も好きです。英 国の占星術師マギー・ハイド氏が書いた『ユングと占星術』という本を翻訳しましたが、著者とはいまでも家族的なつきあいをしています。占いは、高校生のこ ろから雑誌に原稿を書かせてもらっているので、来年でこの道30年です。かたわらにはずっとユングの自伝がありました。
(構成・加来由子)

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