2011年11月13日日曜日

asahi shohyo 書評

三浦哲郎、内なる楕円 [著]深谷考

[掲載]2011年10月30日   [ジャンル]文芸 ノンフィクション・評伝 

  昨年亡くなった私(わたくし)小説作家に関する評論集。書名は、東京で生きる東北人の孤独を描いた短編「楕円(だえん)形の故郷」にちなむ。三浦は東京で 暮らしながら、故郷の東北・南部地方に絶えず目を向け、北の人たちの悲しみをみつめた。東北と東京という二つの定点をもつ楕円形が三浦の文学世界、と著者 は考える。
 逆接の接続詞への言及も興味深い。「忍ぶ川」などごく初期の作品を除けば、三浦は強い拒絶を示す「しかし」を使わず、やわらかな「け れども」を使った。転換したのは、きょうだいを自死や失踪で失った三浦が滅びの血を受け入れ、正面から向きあう決意を固めた時期。人間味に満ちた文体の原 点がここにある。
    ◇
 青弓社・2730円

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著者:深谷考  出版社:青弓社 価格:¥2,730

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