メスの閉経期、チンパンジーになかった 米大教授ら確認
2007年12月18日11時34分
ヒトの女性にある閉経期が、ヒトに最も近い類人猿である野生のチンパンジーにはないことを、米ハーバード大のリチャード・ランガム教授や京都大霊長類研 究所の松沢哲郎所長らの国際共同研究チームが確認した。閉経後のヒトの女性は、子育ての知恵や経験を生かして種の繁栄に貢献するように進化し、動物の中で は特異な存在だという。この「おばあさん仮説」を類人猿の調査から初めて裏付けたことになる。18日発行の米科学誌カレント・バイオロジーに発表した。
高齢の野生のメスのチンパンジー。推定年齢は53歳で、人間の70代後半に相当する=03年3月、ギニア・ボッソウで、京都大学霊長類研究所提供 |
閉経後も長く活動するメスの存在は霊長類ではヒトにしかないと考えられてきたが、ヒトに最も近いチンパンジーのメスに閉経期がみられないことで、その可能性がさらに高まった。
国際チームは、タンザニア、ウガンダ、ギニア、ガンビアのアフリカ4カ国のチンパンジー6集団を長年にわたり観察している。今回はメスのチンパンジー延べ534頭分の出産データを調べた。
その結果、メスは、10代前半で子どもを初出産し、その後も6〜8年間隔で産み続けた。50年以上生き続けることはまれだが、その直前まで子どもを産んでおり、子どもを産む能力をなくすのと寿命が終わるのがほぼ同じだった。
比較のため、似た環境で狩猟採集生活をしているアフリカや南米の女性を調べたところ、子どもを産み始めるのはチンパンジーより少し遅く、ピークは30代前後。70代過ぎまで生きるが、50代で閉経を迎え、出産はしなくなった。
ヒトの「おばあさん仮説」は、98年に米ユタ大学の人類学者クリスティン・ホークス教授らが提唱した。閉経後の女性は人類独自に進化した存在で、孫の世話をしてくれる女性がいると、子孫の存続に有利だったとされる。
京大霊長研の松沢所長は「チンパンジーの子育ては基本的に母親だけでする。これに対してヒトは閉経後の女性の知恵と力を生かすように進化してきた」と話している。