字のちから 成り立ちにこもる人々の思い
[掲載]2009年1月4日
- [評者]大上朝美
正月、書き初めをすることはめったになくなったが、墨の香を漂わせながら筆を運ぶのは、よいものだった。「漢字検定」が多くの挑戦者を集めているらしい。書く文字そのものの力に、改めて関心が高まっているのだろうか。
『白川静』は、独自の研究で古代中国の世界観から漢字の成り立ちをたどり、体系づけた「白川漢字学」への入門書だ。原初には言 葉が文字そのものであり、文字本来の力=「呪能(じゅのう)」が文字をつくったのだという。2006年、96歳で亡くなるまで前進また前進を続け、大部の 著作を残した学者の生涯と学問と思想を、平易に解く。
異色の書家・評論家による『漢字の文明 仮名の文化』は、一部「白川漢字学」を引用しながら中国や朝鮮半島、ベトナムなど東ア ジアの漢字文化圏をとらえ、その中で日本の歴史や文化を位置づけ直そうとする。日本で生まれた平仮名の書法に日本語の性質を、中国の王朝の変遷を書に見て とるなど、書家ならではの視線も興味深い。
平家納経に魅せられて以来古典研究に没入し、ついには「古筆学」を打ち立てた学者・小松茂美もまた、「文字」に魅入られた人間 といえるだろう。その半生を追う『満身これ学究』は、中学を出て国鉄勤務のとき広島で被爆した小松の、学問へのすさまじいばかりの献身を描き尽くす。
『文字の美・文字の力』は、グラフィックデザイナーが40年来、絵画や諸道具、衣服や装飾品など、「思いがけない場所に思いがけない手法」で現れる文字をアジアで採集してきた記録写真。人々の、文字に込めた思いが響いてくるようだ。
京都・清水寺で昨年暮れに発表された08年を表す1字は「変」だった。さて今年はどんな字がふさわしい年に、できるだろうか。
- 白川静 漢字の世界観 (平凡社新書)
著者:松岡 正剛
出版社:平凡社 価格:¥ 819
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- 漢字の文明 仮名の文化—文字からみた東アジア (図説 中国文化百華)
著者:石川 九楊
出版社:農山漁村文化協会 価格:¥ 3,200
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- 満身これ学究—古筆学の創始者、小松茂美の闘い
著者:吉村 克己
出版社:文藝春秋 価格:¥ 1,950
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- 漢字—生い立ちとその背景 (岩波新書)
著者:白川 静
出版社:岩波書店 価格:¥ 777
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