2009年8月6日木曜日

mainichi shasetsu 社説 20090805

社説:クリントン訪朝 まずは女性記者釈放を

 米国のクリントン元大統領が平壌を電撃訪問した。北朝鮮側の報道によれば金正日(キム・ジョンイル)総書記と会談し、幅広く意見交換したという。成果を期待しつつ、冷徹に見守りたい。

 この訪朝の目的は3月以来、北朝鮮に拘束されている米国人女性記者2人を帰国させることである。中国側から川を渡って北朝鮮に越境したとして捕まり、懲役にあたる労働教化刑12年という判決を受けていた。

 だが2人は越境に誘い込まれたとの見方もあり、私たちは判決後に早期解放を主張した。同時に、米国が自国民保護を優先するあまり北朝鮮の核実験やミサイル発射を容認する結果にならないよう注文もした。

 この点、米政府の配慮は利いているのか。2記者の案件を核問題とは切り離して交渉したといい、クリントン氏も「政府特使」などではなく、個人の資格での訪朝だとされるが、実態はどうなのか。

 北朝鮮の要求に応じる形で元大統領が平壌に乗り込んだ以上、2記者を連れて帰る見通しはついているのだろう。焦点は、それ以外にも今後の流れにつき何らかの事前合意があったのか、あるいは平壌での交渉で新たな展開があるかどうかだ。

 例えば94年、いわゆる第1次核危機の際に訪朝したカーター元大統領は、やはり個人の資格ではあったが金日成(キム・イルソン)国家主席と会談して米朝対話への劇的転換をもたらした。

 当時のクリントン政権は以後、米朝枠組み合意による北朝鮮核開発の凍結、北朝鮮による米国人抑留2件の解決、北朝鮮軍高官の特使訪米、オルブライ ト国務長官の訪朝など、米朝蜜月の時代を築いたのである。クリントン氏本人も任期終了間際に平壌訪問や金総書記のワシントン招請を望んだが果たせず、ひど く残念がったという。

 北朝鮮がクリントン氏の来訪にかけた期待は想像に難くない。米紙ワシントン・ポストが「人質」と表現した2記者の釈放を活用して、オバマ政権との交渉を実現し、有利に進め、国連安全保障理事会の制裁決議による締め付けも逃れたいのであろう。これは容認できない。

 2記者の釈放は歓迎する。これを機に、北朝鮮が危機を演出し脅迫で利益を得ようとする従来の路線を転換し、挑発的な行為をやめるなら実に有意義なことだ。そうした路線変更が確実であれば、形式上、核問題をめぐる6カ国協議より米朝交渉が先行しても許容範囲だろう。

 しかし信頼の基盤は既に失われている。私たちは改めて米国に、北朝鮮の術中にはまらないよう慎重な判断を求めたい。日米韓の結束を崩し核やミサイルを既成事実化させるのが北朝鮮の狙いなのだ。




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