余録:エルニーニョ現象の夏
ハワイからニュージーランドまで、太平洋上に浮かぶ島々で広く言い伝えられているのが「マウイ」という神だ。ハワイの神話では4人兄弟の末っ子で 登場するが、何しろやることが大きい。まず海中から釣り針で海底をつり上げて島を作ってしまう▲次に地面すれすれだった天を持ち上げて放り投げ、空を作り 出す。そこを駆け足で動く太陽をオノで襲い、命ごいする太陽にもっとゆっくり動くように求め、人の働く昼の時間を作った。火をおこす術を人間たちに伝えた のもマウイである▲マウイは最後に人に不死を与えようとして女神に殺されるが、神々の秩序を乱し、人間に文化を伝えるいたずら者の神は「トリックスター」 と呼ばれる。なかでも太平洋の広い地域で怪力を振るうマウイはスケール抜群のトリックスターだ▲さてスペイン語で「神の子」(イエス)を意味する「エル ニーニョ」は、東太平洋赤道付近の海水温が上昇する現象だ。だがこちらの神の子も、広く太平洋の全域に気象変動をもたらすスケールの大きないたずらで人間 生活に影響を与える▲豪雨や低温、日照不足などが農作物にも影響を及ぼす今夏だが、梅雨前線の停滞をもたらしたのが「エルニーニョ現象」だそうだ。熱帯の 海水温上昇がめぐりめぐって偏西風南下をもたらし、日本付近の太平洋高気圧の張り出しを阻んだという。いやはや手の込んだいたずらだ▲エルニーニョの影響 で地球全体の平均海面水温は観測史上最高を示したが、それが列島では冷夏になるから地球は複雑だ。ここは人に恩恵をもたらしてきたマウイの神に本来の「日 本の夏」を恵んでくれるよう祈るしかないのか。
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