2009年9月8日火曜日

mainichi hasshinbako 20090908

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発信箱:埋もれゆく言葉=玉木研二(論説室)

 「破天荒」を6割以上の人が「豪快で大胆な様子」と思った。国語世論調査で出た用語の誤解の一例だ。本義は「誰も成し得なかったことをすること」である。うーん。

 今回の調査ではないが、「おっとり刀」を、やおら、ゆっくりと刀を取って、という意味に取る人が結構いるそうだ。逆である。刀を腰に差す間もなく、急ぎ押し取って駆けつける様。「おっとり」の誤解だ。「堀部安兵衛、おっとり刀で高田馬場(たかだのばば)へ」と決闘の助太刀に飛んで行く場面が「じゃ、まあ、行って来るかな」とのんびり出かけるのでは講談、浪曲にならない。

 こんな極端は正さねばなるまいが、言葉は生き物だ。本来の意味に縛り、他の用法や解釈を一切禁じては窮屈極まりない。言葉の創造力もそぐ。誤用を笑ったりしかったりするより、時代環境や価値観とともに変転する言葉の生きた例として教材にしよう。文法暗記よりよほど奥深い。

 格差問題でしきりに使われるようになった「勝ち組」「負け組」についてもお願いしたい。本来、ブラジルの日本人移民社会で祖国の敗戦を信じず「本当は勝ったのだ」と言い張った「勝ち組」と、日本が負けた現実を認めた「負け組」の人々を指した。

 だが最近辞書も「競争社会における勝者、敗者」の意味で掲載し、多数の死傷者を出した「勝ち組」「負け組」対立の悲劇を表す言葉としてとらえる人はもはやまれだ。

 海外移民の辛苦やこうした人々をよそに経済復興を急いだ戦後日本の経済成長など、この言葉をキーワードに浮かぶ歴史がある。どうぞ先生たち、この言葉を教室で取り上げる時、かつてもう一つ別の大切な意味を持っていたことを子供たちに伝えてほしい。



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