2009年9月15日火曜日

asahi shohyo 書評

なぜ宝塚歌劇に客は押し寄せるのか [著]中本千晶

[掲載]週刊朝日2009年9月18日号

  • [評者]青木るえか

■勧め方のピントがずれてんじゃないか

  今まで宝塚歌劇啓蒙書籍(宝塚ってこんなに面白いんですよ、見にいってみませんか〜、と人々を誘う本)はたくさん出ていて、そのほとんどは読んでるのだけ ど、面白かったためしがない。宝塚を知らなかった時に読んでも「では見にいってみようか」と思わされなかったし、宝塚を知った後に読むと「いくら入門書だ からってこんなありきたりな切り口orミョーにハイテンションで書かれちゃ読んでられねえ」と思わされた。

 しかし、いわゆる「男役歌劇」の世界をシロウトにうまく宣伝啓蒙する書籍は待ち望まれるものなので、これもすぐに取り寄せた。

 「タカラヅカに学ぶ組織マネジメント」なんていう章がある。これは新しい。しかしこれは宝塚歌劇啓蒙書籍において珍しいので あって新書のたぐいではゲンナリするほどありきたりの論である。で、このありきたりの論が宝塚歌劇啓蒙において新鮮に作用するかといえば……まったくそん なことはなく、ただ「ムリヤリありきたりな図式にはめこんだだけ」に終わっている。トップスターは社長だとか、年功序列と成果主義とか、これ見てビジネス マンが「なるほど、オレと同じだな」と思って宝塚見にいくのかよって話だ。「男がタカラヅカを観る10のメリット」という章もある。この章読んで宝塚見に いく男は、次に別の本読んで「一から始める西国三十三カ所巡礼」とかに行くだろう。

 なので、この本については「何か勧め方のピントがずれてんじゃないか」と思うのだが、読んでいて同意できる部分もあった。それ は「ファンにチケット取ってもらってドタキャンするな」で、これは私にも覚えがある。OSKという宝塚に似た男役歌劇の公演を見てもらいたくてチケットを 取って招待したら、前から2列目の席なのに公演30分前に電話一本でドタキャンされた。その席を空席にしてしまい、私はいまだに恨みを忘れていない。…… などという話をするとますます引かれて、劇場に来てもらえなくなるわけだが。

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