2009年8月6日木曜日

asahi shohyo 書評

〈訳者に聞きました〉レニ・リーフェンシュタールの嘘と真実 野中邦子さん

[掲載]2009年7月29日朝刊

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■ヒトラーを手玉に取った女性芸術家の素顔

 レニ・リーフェンシュタールほどその評価が両極端に分かれる芸術家は珍しいかもしれません。彼女に関する記述は自伝も含めてたくさんあっても、その生涯は神話や伝説に包まれています。

 レニは、ヒトラーの庇護(ひご)を受け、『意志の勝利』や『オリンピア』など映画史に残る作品を撮りました。それにもかかわら ず、最期までナチのプロパガンダに関与したと認めず、芸術家としてなすべきことをしただけと語っています。芸術のためなら戦争責任は免れるのか、と著者は 問いかけます。著者は500ページを超えるこの本で、レニとその周辺の人々への長時間のインタビューや原稿、写真など膨大な未発表の資料を基に、知られざ る素顔に迫ります。

 ダンサー、女優、映画監督として経歴を積んだレニは、ヒトラーとの出会いによって才能を開花させました。この本で浮かび上がる のは、野心家で自己中心的、自己顕示欲の強い、人間的には共感できない人物です。しかし、自らヒトラーに近づき、チャンスをものにした吸引力もまた才能で はないかと思わせる一種の魅力も認めざるを得ません。絶対的な権力者が差し出す創造の自由は、芸術家にとって拒みきれないものでしょう。しかし、レニの作 品は結果としてナチの勢力を増大させ、戦争への道を開くきっかけとなりました。今年はヒトラー生誕120年に当たり、ドイツでは依然として上映禁止の『意 志の勝利』が、日本で上映されます。私たちは本書とこの映画によって、過去に学ぶことができます。レニの生涯は、今の時代に生きる私たちに、自らの行動や 選択を省みることの大切さを促すのです。(談)

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 スティーヴン・バック著

表紙画像

レニ・リーフェンシュタールの嘘と真実

著者:スティーヴン バック

出版社:清流出版   価格:¥ 2,730

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