社説:人事院総裁辞任 改革全体を仕切り直せ
改革の迷走を物語る結末である。麻生内閣下で公務員制度改革に異を唱え続けた谷公士人事院総裁が11日、任期半ばで辞任した。
麻生内閣が谷氏らの反対を押し切り国会に提出した国家公務員の人事管理の一元化を目指す法案は廃案となり、公務員制度改革は文字通り宙に浮いた状 態だ。官僚依存からの脱却を掲げる新政権としても当然、放置できぬ事態だ。「政と官」の関係全般を見直す中で、人事、勤務条件など改革を仕切り直すべきで ある。
現政権と谷氏の対立は異様としか言いようがなかった。縦割り行政の打破に向けて昨年成立した国家公務員制度改革基本法に基づき、麻生内閣は幹部公 務員の人事を一元管理する内閣人事局を設置する法案をさきの国会に提出した。ところが人事院は各省の給与等級に応じた定数を決める権限の移管などに反対 し、谷氏は象徴的存在だった。
結局法案は解散で廃案となり、衆院選惨敗で麻生内閣による改革は頓挫した。谷氏については民主党政権が実現した場合のあつれきを危ぶむ見方もあった。今日の混乱を生んだ要因に現政権の指導力不足と、人事院の硬直的に過ぎる対応があったことを改めて指摘したい。
今後、新政権が改革の出直しを図るが、もつれた糸を解きほぐすのは容易ではない。その意味で、2点を要望したい。
まず、「脱官僚」の全体像を固めたうえで、幹部人事や人事評価のシステムを構築することだ。
新政権は国家戦略局を置き、官僚に依存しない政策調整の司令塔とする方針だ。幹部人事を一元管理する内閣人事局を置く場合、こうした新組織との連携をどうするのか。各省幹部の人事評価基準をどう設け、どこが運用するのか。全体的な見取り図をまずは描いてほしい。
さらに、民主党がマニフェストに掲げた公務員の天下りあっせんの禁止や、公務員の労働基本権回復などと並行して改革を進めることだ。
定年を待たずにキャリア官僚が退職する慣行を是正しなければ、実際には天下り根絶は難しい。人事院が握るさまざまな権限も、国家公務員の労働基本権制約の代償措置としての性格を持つ。基本権問題の早期決着が、人事院のあり方を決めていくうえでも必要だろう。
民主党はマニフェストで国家公務員の総人件費2割削減なども打ち出したが、実現を危ぶむ声も根強い。政権交代を控え各省で幹部の駆け込み的な天下 りが相次ぐなど、けじめも迫られている。これまでの慣例を見直し、官僚OB以外から新たな総裁を選ぶことも、新政権の有力な選択肢である。
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