社説:イチロー選手 挑戦に終わりはない
シアトル・マリナーズのイチロー(鈴木一朗)選手が大リーグ通算2000安打を達成した。大台到達まで9シーズンは史上最速で、出場1402試合 は史上2番目のスピード記録だ。イチロー選手は9年連続200安打以上の大リーグ新記録にもあと5本と迫っており、こちらは近日中に達成してくれるだろ う。
8年前の4月2日。本拠地セーフコ・フィールドでのアスレチックスとの開幕戦第4打席、中前に記念すべき大リーグ初安打を放った。以来9シーズ ン。新人王とMVPのダブル受賞、シーズン262安打の大リーグ記録更新など数々の偉大な業績を打ち立ててきた。イチロー選手の攻・走・守にわたる活躍 に、日本中が元気と勇気をもらい、幸せな気分に浸ることができた。
ただ今回は、これまでの右肩上がりのイチロー選手の快挙と違い、一抹の不安を感じさせながらの記録達成でもあった。
春先から暗雲の予兆はあった。日本が連覇を達成した3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、イチロー選手は不振に苦しんだ。最後 の最後に決勝打を放ち、「イチローらしさ」を示したものの、出血性胃かいようのため大リーグの開幕から8試合を棒に振った。WBCで背負った重圧の大きさ を思い知らされる事態だった。
戦列復帰後は自己ベストの27試合連続安打をマークするなど、開幕での出遅れを取り戻し、いつものイチロー選手に戻ったように見えた。だが、2000安打とシーズン200安打の達成にめどが立った8月下旬、再び暗雲が襲う。左ふくらはぎの治療のため8試合を欠場した。
イチロー選手は10月で36歳になる。体のケアには人一倍気を使い、体調維持に努めてきたイチロー選手だが、やはり「年齢の壁」が立ちはだかってきたのだろうか。これまで病気や故障で長期離脱することがなかったイチロー選手だけに、ファンの目には不安に映る。
オリックスに在籍していた1994年、登録名を「鈴木」から「イチロー」に改め、シーズン210安打の日本プロ野球記録を樹立した。当時のイチ ロー選手の季節が「春」だとすれば、現在は「実りの秋」を迎えたころだろう。収穫に感謝する一方で、冬の訪れが近いことをだれもが予感してしまう季節でも ある。
だが、これまでもわれわれの予想をはるかに超えた次元で不可能を可能にしてきたイチロー選手だ。過去の名選手が苦戦した年齢から来る衰えに対しても、円熟した技で克服してほしい。イチロー選手が真価を発揮するのは、前人未到の未知の領域に突入してからだと信じたい。
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