2009年10月8日木曜日

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生きがい開発、高齢化団地に活気…柏で実験

 東京大学が、千葉県柏市、都市再生機構(UR)と共同で、急速に高齢化が進む同市内の団地を舞台に、「地域再生」事業に乗り出した。

 希望すれば自宅で最期まで過ごせる在宅医療システムの構築と、高齢者の生きがいづくりプログラムの開発が柱。研究と実践を同時に進め、5年後をめどにノウハウを確立し、他の団地再生に生かしたい考えだ。

 この「柏―東大プロジェクト」を主導するのは、今年4月、東大総長室直轄で設置された「東京大学高齢社会総合研究機構」。超高齢社会が抱える課題 の解決を目的に、学部横断的に研究を進める組織で、医学、法学、工学、人文社会など12研究科2研究所の教授ら計約80人が名を連ねている。

 団地再生の舞台となるのは、1964年から賃貸が開始された「豊四季台(とよしきだい)団地」(総戸数4666戸)。建物の老朽化が進み、2004年に第1期(1260戸)の建て替えが始まった。高齢化率は、全国平均の23%を大きく上回る39%。独居の高齢者世帯は750戸に上り、孤独死も少なくない。

 同機構は、研究と実践の場として「首都圏の典型的なベッドタウン」を探し、同団地に白羽の矢を立てた。市も歓迎しURと3者で6月に研究会を発足させた。

 これまで、地元の医療・介護関係者に協力を依頼し、団地住民を啓発するシンポジウムを7月と9月に開催。年内をめどに、地元医師会や開業医、救急 病院、在宅介護事業所など関係者による「在宅医療協議会」(仮称)を発足させる。在宅医療の拠点となる診療所と訪問看護ステーションの誘致を図る一方、在 宅医療を担う医師向けの教育研修プログラムを開発する予定だ。

 また、就労や社会貢献などを柱にした、高齢者の生きがいづくりプログラムの開発にも取り組む。野菜や果物の生産・加工・流通を手がける企業を誘致 し、ゆとりある働き方をしながら収入が得られるようにするほか、団地近くに住む学生や子どもも気軽に利用できる多世代交流型の「コミュニティ食堂」を運営 する案などが検討されている。

 東京都の高島平団地や大阪府の千里ニュータウンをはじめ、1960〜70年代に大量に造成された団地は、いずれも住民の高齢化、建物の老朽化など の問題に直面している。同機構の辻哲夫教授は、「豊四季台団地は40年後の日本の姿を体現しており、特に在宅医療の体制作りは急務。ここで有効な再生策を 示せれば、急激に高齢化が進む他の地域の再生事業にも応用できる」と話している。

(2009年10月7日14時35分  読売新聞)



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