2009年10月5日月曜日

yomiuri culture history art Jakuchu Ito purushian blue

若冲の一幅、「プルシアンブルー」で彩色か

 江戸中期の京都の画家、伊藤若冲(じゃくちゅう)(1716〜1800年)の作品で、宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵する「動植綵絵(どうしょくさいえ)」全30幅の一つ「群魚図」の一部に、ドイツで1704年に発見された青色の人工顔料「プルシアンブルー」が使われたとみられることが、同館と東京文化財研究所の共同調査でわかった。

 この顔料は最近の研究で、ほぼ同時代の博物学者である平賀源内や、画家の小田野直武(おだのなおたけ)、司馬江漢らの絵にも使われたと推定されている。「動植綵絵」の制作年は明確でないが、細密で華麗な画風から「奇想の画家」と評される若冲が、舶来の人工顔料をいち早く試していた事実が明らかになった。

 三の丸尚蔵館によると、蛍光エックス線などによる科学分析で、「群魚図」の左下隅に濃青色で描かれた「ルリハタ」のほぼ全面から、プルシアンブルーの成分である鉄を検出。確認されたのはこの個所だけで、他の青色には一般的な「群青」や藍が使われていたという。

 同館の太田彩・学芸室主任研究官は「博物学や西洋画に関心を持つ部類には入らないと思われていた若冲が、プルシアンブルーを使用していたのが興味深い。色彩に強いこだわりのあった若冲がその存在を知り、積極的に入手したのかもしれない」と話している。

 「動植綵絵」全30幅は、6日から東京・上野公園の東京国立博物館(平成館)で始まる「皇室の名宝」展(読売新聞社など特別協力)に一挙展示される。

(2009年10月5日09時29分  読売新聞)



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