2009年10月10日土曜日

mainichi shasetsu 20091010

社説:日韓首脳会談 北の核で結束強めた

 鳩山由紀夫首相のアジア外交がスタートした。皮切りは韓国の李明博(イミョンバク)大統領とのソウルでの会談である。新政権のアジア重視外交の展 開には、まずは価値観を共有する隣国との強い協力関係が不可欠だ。その意味で両首脳が「揺るぎない連携」(首相同行筋)を確認したのは意義がある。

 首相にとって今回の首脳会談のポイントは二つあった。北朝鮮の核問題への対処と、東アジア共同体構想への協力取り付けである。

 北朝鮮の核問題は先の温家宝・中国首相の訪朝が事態を動かすきっかけになるかどうか注目されている。北朝鮮が4月に6カ国協議からの離脱を表明してから初めて金正日(キムジョンイル)総書記が6カ国協議への復帰を示唆する発言をしたからだ。

 しかし、北朝鮮が米国との直接対話を最重視している姿勢に変わりはなく、6カ国協議への復帰の可能性を示唆したといっても、あくまで米朝対話の進 展を前提条件としているようだ。6カ国協議をボイコットして以降、弾道ミサイル発射や核実験を強行しウラン濃縮活動の推進も表明している北朝鮮の行為は決 して許されるものではない。

 北朝鮮に求められているのは「すべての核兵器と核計画を放棄する」という05年9月の6カ国協議共同声明の履行である。鳩山首相が「北朝鮮の核放 棄という意思が示されない限り経済協力は行うべきではない」という李大統領の主張に同意し、両首脳が北朝鮮の具体的行動を見守る必要性を確認したのは当然 である。10日に北京で行われる日中韓の首脳会談で首相と大統領は日韓の立場を正しく伝える必要がある。

 首相が提唱する東アジア共同体について大統領は会見で「時間はかかるかもしれないが友愛の精神で努力すれば不可能ではないと思う。他の国々で実現しているのに東アジアだけできないはずはない」と肯定的な考えを示した。

 国家体制の違いや経済格差の大きさなどからアジアでの地域統合の実現は容易ではない。しかし、この地域にはすでに東南アジア諸国連合 (ASEAN)プラス日中韓やASEAN地域フォーラム(ARF)、東アジア首脳会議などの協力の枠組みが存在している。こうした既存の枠組みの中で具体 的な協力を積み重ねていく先の共同体構想は長期的課題として取り組む価値はあるだろう。

 これまで日本のアジア外交のさまたげになってきた要因に歴史認識問題がある。これに関し首相は大統領に「新政権はまっすぐに、歴史を正しく見つめる勇気をもっている」との考えを伝えた。アジア重視外交を進めるには必要な姿勢である。

毎日新聞 2009年10月9日 23時59分




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