2009年10月10日土曜日

mainichi shasetsu 20091009

社説:新政府税調 「真の主役」の出番です

 新しい政権下で新しい税制調査会が活動を開始した。税に関する鳩山政権の方針を決める場である。政権が公約を果たせるかどうかは、この新組織の力 にかかっている。約束通り既得権益を一掃し、公平で、決定過程が分かりやすく、納税者に納得のいく税制へと変える「真の主役」の活躍に期待したい。

 既得権益に切り込めるかどうかの試金石となるのが、租税特別措置の見直しだ。住宅ローン減税や企業の研究開発を促進するための減税など、特定の政策目的のため特別に課税の例外を認めたものだ。

 ところが、いったん特別扱いを始めると、なかなか元に戻せないという問題があった。いまだに300種以上の特別措置が残っている。中にはガソリン税などの暫定税率のように増税になっているものもあるが、大半は非課税や減税といった、政府の収入減になるものだ。

 特定業界に配慮した優遇は「隠れ補助金」との批判が根強かったが、税制の実権を握っていた自民党税調のもとで維持されてきた。民主党政権は与党税 調を廃止して政府税調に一本化し、メンバーも有識者主体から、会長の財務相以下、大臣、副大臣らで構成する政治家主体へと抜本的に改めた。政策の決定過程 が国民からも見えるようにするという。政官財の癒着を絶つうえで不可欠な枠組みは整いつつある。自民党政権下でできなかったしがらみの根絶を、具体的な形 で表してほしい。

 やる以上は、聖域なしの姿勢で臨むことが肝心だ。民主党は政権公約で「効果の不明なもの、役割を終えた租特は廃止し、真に必要なものは『特別措 置』から『恒久措置』へ切り替える」としている。だが個別の審査を始めると、利益団体や省庁内からさまざまな抵抗があるだろう。優先順位を付け、あえて困 難な選択ができるかどうかが試されている。

 租特は自民党政権による継ぎはぎ政策の象徴だった。新政府税調には、長期的な視点、一貫性のある理念で税制を見直してもらいたい。

 景気低迷の影響で税収はただでさえ大幅に落ち込んでいる。一方、高齢化の進行に伴い増加が避けられない社会保障費の財源確保、つまり増税の必要性が高まっている。国と地方の借金は合計で09年度末に800兆円を超える見通しだ。

 もはや口当たりのよい減税や控除のオンパレードにだまされる国民ではない。ただし新税を導入するにしても増税を選択するにしても、公平さが確保さ れ、国民が納得することが大前提だ。単なる数字の足し算、引き算ではなく、税を通じてどのような社会を実現したいのか、大きな構想を聞かせてほしい。

毎日新聞 2009年10月9日 0時12分





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