2009年10月8日木曜日

mainichi shasetsu 20091008

社説:通信・放送行政 成長を促す仕組みに

 鳩山政権が刷新を掲げている課題のひとつに通信・放送行政がある。総務省が握っている権限をどうするのか、そして、NTTの経営形態はどうあるべきなのかがポイントになっている。

 民主党は、通信・放送行政を総務省から切り離し、独立した行政委員会にする方針を示している。

 国家権力を監視する役割を持つ放送局を国家権力が監督するという矛盾を解消し、放送への国の恣意(しい)的な介入を排除することを民主党は目的として挙げている。

 放送番組への政治の介入はたびたび問題となってきた。こうした介入を封じるためにも、早期に実現してもらいたい。

 一方、NTTの経営形態の見直しについて原口一博総務相は、旧政権下とは別の枠組みで検討する考えを示している。

 放送と通信をめぐる環境は大きく変化している。これに合わせて総務省は、放送と通信に関する法律の見直しを進めようというわけだ。

 デジタル化と大容量通信の普及を前提に、放送と通信について個別に規定していた法律を整理して一本化することをめざしている。通信と放送の双方が 利用できる無線局の設置など、通信と放送の融合を促す内容となっている。しかし、総務省所管の法律に限定されており、効果には限界がある。

 光回線の普及や高精度の電子部品といった要素技術で日本は優位に立ちながらも、検索や動画配信などの例でわかるように、トータルなサービスの提供という点では、立ち遅れているのが現状だ。

 携帯電話を利用した情報サービスで日本は先行したものの、アップルやグーグルといった米国勢は、さらにパソコンとの連携などネットワークを融合したサービスを武器に、携帯電話でも自らの技術を世界に広げようとしている。

 日本のネット関連やコンテンツ産業を成長産業とするには、行政も成長を促す体制に改める必要がある。

 通信、放送は総務省、電子機器、ソフト、コンテンツは経済産業省、著作権については文化庁という、縦割りの行政の構図を改めるべきだ。

 さらに、内閣のもとにあるIT戦略本部や知的財産戦略本部とも統合するといった改革も必要だろう。また、外務省が進めるソフトパワー政策や、映画撮影の誘致で観光の支援をめざす国土交通省のフィルムコミッション政策と連動できるようにもすべきだ。

 単なる総務省やNTTの組織いじりではなく、より大きな視点で、通信・放送行政の見直しに取り組んでもらいたい。

毎日新聞 2009年10月8日 0時11分



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