2009年10月3日土曜日

mainichi shasetsu 20091003

社説:予算の作り直し 政治主導の証し見たい

 政権交代後で政府がやらねばならない仕事はただでさえ多いのに、日本経済は不安定なままだ。年末に向けた政府の経済運営は、新政権への信頼のみならず経済の進路を左右する極めて重要なものとなる。

 その経済運営を「政治主導」で行えるかどうかの試金石が、09年度補正予算の中から凍結するものを洗い出す作業だった。しかし、各省庁の自己申告 はこれまでのところ目標に届いておらず、2兆円程度にとどまった模様だ。省益優先の考えから抜け出せず、国民生活の足を引っ張るような姿勢は言語道断であ る。

 今月に入り、日銀の9月企業短期経済観測調査(短観)と、8月の完全失業率が発表になった。いずれも表向きの数値は良くなったが、中身には不安定さがにじんでいる。最悪期を脱したとはいえ、景気の回復力はまだ弱い。

 短観は、企業の景気認識を示す業況判断指数で、大企業・製造業は輸出増を追い風に着実に改善したが、非製造業の改善度合いは小幅だった。中小企業 は、今回の短観で久しぶりに上向いたという段階にすぎない。国内を基盤にする非製造業や中小企業の足取りの鈍さは、内需の弱さを物語っている。

 8月の完全失業率は5.5%で、7カ月ぶりに改善した。しかし、有効求人倍率は過去最低のままだし、新規求人数は7月より減った。何よりも完全失業者数は361万人と、1年間で89万人も増えている。

 先行き不安を映し出すように日経平均株価は7月以来の1万円割れとなった。株価が消費や設備投資に与える影響は無視できない。

 早速、「円高阻止に市場介入も必要だ」「補正予算の執行停止で公共事業を削るのはまずい」といった声が出ている。しかし、それはいつか来た道であり、場当たり的対応を繰り返すだけに終わる。

 鳩山政権は、輸出依存型の経済成長から、国民の暮らしに力点を置いた成長へとカジを切ろうとしている。そうした内需主導型経済の下地づくりには、 国と国の政策への信頼を取り戻し、不安の種を一つずつなくすことが欠かせない。政権公約で掲げた政策を手早く進めるべき時に、前政権のほこりをぬぐうよう な作業に手間取っているようでは、先が思いやられる。政権交代により"リセット"となった来年度予算の編成作業は、例年より1カ月半も短い期間で仕上げな くてはいけないはずだ。

 各大臣は「査定大臣」としてもっと、官僚の能力を引き出し、汗をかかせなくてはいけない。最初が肝心だ。「献身的に徹底的に支える」との言葉を身をもって実行してもらうようにハッパをかけよう。

毎日新聞 2009年10月3日 0時10分




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