2009年10月5日月曜日

mainichi hasshinbako 20091005

発信箱:英語の憂うつ=福島良典(ブリュッセル支局)

 「外国語を知らないものは、自分の国語についても何も知らない」。ドイツの文豪ゲーテ(1749〜1832年)はそう語り、「言語学習のすすめ」を説いたという。

 27カ国が加盟する欧州連合(EU)の公用語は23言語。各加盟国の文化を守るため、多言語政策を進め、欧州市民に「少なくとも二つの外国語」の習得を呼びかけている。

 EU統計によると、チェコ、ルクセンブルク、オランダでは高校生全員が二つ以上の外国語を学ぶ。その一方で、英国では生徒の半数が外国語をまったく勉強していない。

 その結果、EUが頭を悩ませているのは英国人通訳の不足だ。さまざまな言葉が飛び交うEUの運営に通訳は欠かせないが、英語と他言語を取り持つプロは「絶滅危惧(きぐ)種」(オルバン欧州委員)という。

 9月末のドイツ総選挙で勝利した中道右派・自由民主党のウェスターウェレ党首が英BBC記者から英語で質問され、英語での応答を断った場面も、そんな英語を巡る状況をほうふつとさせた。

 新政権で外相に就任するウェスターウェレ党首は英語がしゃべれないわけではない。インターネットの動画サイトで聞いた英語講演は流暢(りゅうちょう)とは言い難いが、外国人の英語としては十分、通じる水準だ。

 だが、次期外相は「あくまでもドイツ語で」を貫き、はからずも、英メディアに「(英国の)大学で独語を学ぶ学生数の減少」(インディペンデント紙)を嘆く機会を提供した。

 グローバル(地球規模)化時代、多くの国の人々が意思疎通と相互理解の道具として英語を使う。だが、その「通じる」便利さゆえに、他の言語文化を知る機会を失っているのは、英語を母語とする人たちなのかもしれない。

毎日新聞 2009年10月5日 0時07分




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